WEBサイト観光地で飲食店や宿、お土産店などを営んでいると、海外からのお客さまの姿を見かけることが当たり前になってきました。日本政府観光局(JNTO)の発表(2026年1月21日、推計値)によると、2025年の訪日外客数は42,683,600人で、前年比15.8%増と年間の過去最高を更新しています。
訪日客の多くは、旅行前や旅行中にスマートフォンで店や宿を調べます。そのとき、メニューや料金、予約方法が母国語や英語で読めるかどうかは、来店や予約を決める大きな材料になります。この記事では、観光地の事業者さまに向けて、多言語サイト対応の進め方を、自動翻訳と人の翻訳の使い分け、Googleが推奨するhreflangの設定などを交えて解説します。
なぜ今、多言語対応が必要なのか
「読めない店」は選択肢に入りにくい
日本語だけのサイトでも、ブラウザの翻訳機能で読んでもらえることはあります。しかし、メニュー名や料理の説明、宿のルールなどは、機械的な翻訳では意味が伝わりにくいことも少なくありません。「何が食べられるのか」「いくらかかるのか」「どうすれば予約できるのか」が分からないと、訪日客は不安を感じ、別の店を選んでしまいます。
当日の問い合わせ対応も楽になる
アレルギー情報、支払い方法、営業時間、予約のキャンセル規定などを多言語で掲載しておけば、来店時や電話での説明の手間を減らせます。スタッフの負担軽減も、多言語対応の大きなメリットです。
自動翻訳と人の翻訳、どう使い分ける?
多言語化の方法は、大きく「自動翻訳(機械翻訳)」と「人による翻訳」に分けられます。どちらか一方ではなく、ページの重要度に応じて組み合わせるのが現実的です。

自動翻訳のメリットと注意点
自動翻訳は、低コストで多くの言語に一度に対応できるのが強みです。お知らせやブログなど、更新頻度が高いページには向いています。
一方で、固有名詞や料理名、地名が不自然に訳されたり、意味が変わってしまったりすることがあります。また、Googleのスパムに関するポリシーでは、「大量生成されたコンテンツの不正使用」の例として、スクレイピングしたコンテンツを翻訳などの手法で加工し、ユーザーにとってほとんど価値がない大量のページを生成することが挙げられています。自社のオリジナルの情報を翻訳すること自体が問題になるわけではありませんが、翻訳結果を誰も確認しないまま大量に公開するのは避けたほうが安全です。
人の翻訳が向いているページ
- トップページ、店舗・宿の紹介ページ
- メニュー、料金、プランのページ
- 予約方法、キャンセル規定、利用上の注意
- アレルギー、宗教上の配慮など、誤解がトラブルにつながる情報
こうした「来店・予約の判断に直結するページ」は、ネイティブチェックを含む人の翻訳や、少なくとも人による確認を入れることをおすすめします。
おすすめは「自動翻訳+人の確認」
費用と品質のバランスを取るなら、自動翻訳で下訳をつくり、重要なページだけ人が確認・修正する方法が有効です。よく使う料理名や専門用語の訳語集(用語集)を作っておくと、ページ間で訳がぶれにくくなります。たとえば料理名は、ローマ字表記に短い説明を添える(例:食材や調理法を一言で補う)など、表記のルールを決めておくと、メニューと紹介ページで呼び方が変わってしまう混乱を防げます。
多言語サイトの作り方:Googleが推奨する基本
多言語ページを検索で正しく表示してもらうには、技術的な設定も重要です。ここではGoogle検索セントラルのドキュメントで示されている基本を紹介します。
言語ごとに別のURLを用意する
Googleは、ページの各言語のバージョンに異なるURLを使用することをおすすめしています。一方で、Cookieやブラウザの設定を使って、同じURLのまま表示言語を切り替える方法はおすすめしないとしています。たとえば「example.jp/en/」「example.jp/zh-tw/」のように、言語ごとにディレクトリを分けるのが分かりやすい方法です。
言語の自動リダイレクトは避け、切り替えリンクを置く
Googleは、ユーザーの使用言語を推測して別の言語バージョンへ自動的にリダイレクトすることは避けるよう案内しています。ユーザーや検索エンジンが、すべての言語バージョンを見られなくなる場合があるためです。代わりに、各ページに他の言語版へのリンク(言語切り替えボタン)を設置しましょう。

hreflangで言語版の関係をGoogleに伝える
hreflangは、「このページには英語版や中国語版がある」という関係をGoogleに伝えるための指定です。HTMLのhead内、HTTPヘッダー、サイトマップのいずれかの方法で設定でき、Googleはどの方法でも同様に認識するとしています。主な注意点は次のとおりです。
- 他の言語版だけでなく、そのページ自身の言語版もリストに含める
- 代替URLは「https://」から始まる完全なURLで指定する
- 言語版どうしが互いに参照し合っていないと、指定が無視されることがある
- 言語コードはISO 639-1形式、地域を指定する場合はISO 3166-1 Alpha 2形式を使う(例:en、ja、zh-TW、ko)
- 国コードだけを単独で指定しない
- どの言語にも当てはまらない人向けに、x-defaultで既定のページを指定できる
中国語の場合、繁体字と簡体字を区別したいときは「zh-Hant」「zh-Hans」のように文字体系を指定することもできます。台湾・香港からのお客さまと中国本土からのお客さまでは使う文字が異なるため、ターゲットに合わせて決めましょう。
翻訳するのはテンプレートだけでなく本文まで
Googleのドキュメントでは、ナビゲーションやフッターなどのテンプレートだけを翻訳して、本文の大部分が1つの言語のままになっているページは、ユーザーにとって不便であると説明されています。メニュー名だけ英語で本文は日本語という状態にならないよう、主要な内容まで翻訳しましょう。
観光地の事業者がまず多言語化したい情報
すべてのページを一度に多言語化する必要はありません。まずは次の情報から優先して整えるのがおすすめです。
飲食店の場合
- メニュー(料理の写真、使用食材、価格、税・サービス料の扱い)
- アレルギー表示、ベジタリアン・宗教上の配慮への対応可否
- 予約方法、席数、営業時間・定休日、支払い方法
宿泊施設の場合
- 客室・プラン・料金、チェックイン/アウト時刻
- 館内のルール(浴場の利用方法、食事の時間など)
- アクセス(最寄り駅・バス停からの行き方、送迎の有無)
小売店・お土産店の場合
- 主な商品と価格、配送や持ち帰りの注意点
- 免税販売の対応可否、支払い方法
- 営業時間、店舗の場所、目印
どの言語から始めるべきか
対応言語は、実際に来ているお客さまの国・地域から決めるのが確実です。JNTOの発表では、2025年は中国、韓国、台湾、米国、香港、タイ、豪州の7市場が年間で100万人を超えたと紹介されています。ただし、地域や業種によって来訪者の構成は大きく異なります。店頭での聞き取りや予約データ、アクセス解析の言語別データを確認し、まずは英語を軸に、来訪の多い言語を追加していくと無理がありません。
多言語サイトでよくある失敗
日本語版だけ更新され、外国語版が古いまま
営業時間や料金を変更したのに、英語版だけ以前の情報が残っている、というのはよくある失敗です。訪日客にとっては、古い情報のほうが「正しい情報」に見えてしまいます。日本語版を更新したら外国語版も更新するという手順を、運用ルールとして決めておきましょう。更新が追いつかないページは、無理に多言語化せず、最低限の情報に絞るのも一つの判断です。
画像の中の文字が翻訳されていない
メニューや料金表を画像で掲載していると、ページの翻訳機能でも読み取れず、検索にも反映されにくくなります。重要な情報は画像ではなくテキストで掲載することで、自動翻訳を使う訪日客にも伝わりやすくなります。
予約・問い合わせの先が日本語のみ
ページは多言語化したのに、予約フォームや問い合わせ先が日本語だけ、というケースも見られます。フォームの項目名や送信後のメッセージ、自動返信メールまで多言語化できているか確認しましょう。対応できる言語やスタッフが限られる場合は、「英語でのお問い合わせはメールでお願いします」のように、対応できる範囲を正直に書いておくことも大切です。
まとめ:伝わる情報を、正しい仕組みで届ける
訪日客が増えている今、観光地の飲食店・宿・小売店にとって、多言語サイトは「あればいい」から「来店を左右するもの」に変わりつつあります。重要なページは人の翻訳や確認で品質を確保し、更新の多いページは自動翻訳を活用する。そして、言語ごとのURL、切り替えリンク、hreflangといったGoogleが推奨する基本を押さえることで、海外のお客さまに必要な情報が届きやすくなります。
WEBeffectでは、多言語サイトの構成設計、翻訳の進め方のご提案、hreflangなどの技術的な設定まで、事業の規模に合わせてご相談を承っています。「まずは英語ページを1枚だけ作りたい」という段階でも大丈夫です。初回のご相談と概算のお見積りは無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
